予知保全ってなあに？そのポイントやメリットについて詳しくなろう！
少子高齢化の影響による労働人口の減少で、現在あらゆる業界で人材不足が慢性化してきています。ビルメンテナンス業界もまた例外ではなく、人材不足は深刻な問題となっており、いかに効率的にメンテナンス業務を行うかは優先的に解決しなくてはならない一つの大きな課題でもあります。そこで今回は、特にビルの空調設備のメンテナンス業務を効率化させるために欠かせない予知保全について、その詳しい内容から実施に対してのポイント、更にはメリットや従来の保全との違いについて、詳しく解説させていただきます。特に今現在、人材不足で効率化を模索している担当者の方などは、是非一度本コラムをご参考にしてみてくださいね。
予知保全って？
予知保全とは、設備を安定して稼働するために行う保全のひとつで、劣化や故障の兆候を予測して事前に対応するものをいいます。従来の保全は、故障が起きる前に定期的に設備に異常や不具合がないかを確認する「予防保全」、もしくは設備が故障した際に修理をする「事後保全」が一般的でした。それに対し予知保全はIoT機器を活用し、データやセンサーで得た情報をもとに設備の故障や劣化の兆候があるものに対して、部品のメンテナンスや交換などの保全を行うものです。
何故予知保全が注目されるようになったの？
予知保全を含めた保全行為は、一般的には工場設備に対して行うものと思われるかもしれません。しかし、ビルメンテナンスにおいても、電力や空調、機械、給排水などさまざまな設備があり、それぞれ快適かつ安全に稼働する環境設備が必要です。そのため保全は、ビルメンテナンス管理者にとっても重要な業務となっています。その一方で、昨今の少子高齢化により人材不足が激しいビルメンテナンス業界においては、保全を含め業務の効率化が必要とされています。このような状況下において、予防保全や事後保全に比べ、迅速かつ効率的な保全行為が出来る予知保全が注目されるようになったのです。また、IT技術の進化により、予知保全に必須のIoT機器が普及した点も予防保全がより注目されるようになった理由の一つとしても挙げることが可能です。
なお、保全行為全体について知りたい方がいらっしゃいましたら、過去のコラムにて詳しく解説させていただいていますので、是非下記リンクをご参照くださいね。
（設備保全 コラム）
（保守点検 コラム）
予知保全を行うメリットは？
では、ビルメンテナンス、特に空調設備においては、予知保全を行うことによってどのようなメリットが存在するのでしょうか。詳しくご紹介させていただきます。
メンテナンス管理者への負担の軽減
予防保全は、劣化や故障の兆候に関わらず実施しなければなりません。また、事後保全は、ある日突然発生する事態を想定し、常に準備をしておく必要があります。そのため、どちらも非効率でありメンテナンス管理者の負担も少なくありません。これらに対し予知保全は、IoT機器から得たデータに基づいて立てたスケジュールで実施されるため、事後保全や予防保全に比べ、効率的に業務を進められます。その結果、作業員の負担が軽減され、人材不足であっても対応がしやすくなるのです。
空調機器のダウンタイムの最小化
IoT機器の活用により、設備の稼働状況をリアルタイムに可視化出来るうえ、トラブルや故障発生時にはアラートやメールなどで通知されます。そのため、空調機器が中断・停止している時間（ダウンタイム）を最小限に抑えることが出来ます。また、常に設備の監視を行えることから、急な故障のリスクも低減されます。
コストの削減
予知保全では、故障の可能性が高い部品のみを交換するため、部品の交換コスト削減が可能です。予防保全では、故障の兆候に関わらず、一定の期限を決め、その期限になれば劣化の有無に関係なく部品を交換するので、問題のない部品でも交換しなければなりません。また、事後保全では故障後の対応となり、場合によっては機器全体の交換・修繕が必要となってきます。そのため、いずれも予知保全に比べ大幅なコストがかかってしまうのです。
どのようにして導入していくの？運用の流れは？
予知保全を導入し、適切に行うためにはどのような流れで進めていけば良いのでしょうか。一般的な流れを下記にてまとめましたので、ご参照ください。
- 現状の保全プロセスの可視化
まず必要なのは、現在どのような保全行為を行っているのかの可視化です。現状の保全プロセスを明確にすることで、作業員の負担増加やコスト増大などの課題点を見つけていきます。
- 仮説立案～検討
現状の課題を解決するためには何が必要なのか、予知保全を導入することで解決に繋がるかなどについて仮説を立てて話し合い検討していきます。
- システムの構築・導入
仮説に基づいた検討結果を踏まえ、予知保全が有効だと判断出来たら、予知保全を行うためのシステムの構築・導入を行います。空調機器にデータ収集用のIoTやセンサーを設置し、データの収集・分析・診断などが可能かどうかをテストしたあと、問題なければ本格的に運用の開始です。
- システムの運用
分析・収集したデータをもとに予知保全を実施します。運用開始後も定期的にデータの見直しを行い、改善点があれば改善し、精度を高めつつ運用を進めていきます。
今後の課題
さまざまなメリットを持つ予知保全ですが、適切に運用し成果を上げるには、いくつかの課題があります。一つは、データ収集を行うためのIoT機器導入コストがかかる点。そしてもう一つは、収集したデータを分析・運用するための人材が必要になる点です。確かに、IoT機器は導入にあたりコストが発生します。ですがIoT機器導入によって、保全行為において継続的なコスト削減が期待出来るため、長期的な視点で検討することが大切です。また、お伝えしている通り、昨今は深刻な人材不足で、IoT機器を運用し活用出来る人材を確保するのは簡単なことではないかもしれません。そもそも、人材不足による課題解決を目的として予知保全を行うケースもあるでしょう。そのような環境下で新たな人材を雇用するというのは、現実的とは言えません。そこで有効な課題解決策の一つとして、外部サービスの利用が挙げられます。専門知識を有した信頼出来るサービスを見つけることが出来れば、社内で人材を確保することが難しくても、適切な予知保全の運用が可能です。
まとめ
今回は予知保全について幅広くスポットライトを当て、詳しく解説をさせていただきました。メンテナンス管理者のコスト削減や負担軽減など、さまざまなメリットを持つ予知保全ですが、活用するためには収集したデータの分析・運用するための人材が必要となってきます。また、IoT機器を導入するにあたって、コストがかかってしまうといった部分も。
そのための対応策として、上記でご説明させていただいた通り、外部サービスを利用したり、コストに関しては長期的な視野で見た際に、保全行為の面で後々削減に繋がっていくということを置いた上で考えていく必要があります。ご検討の際には、本コラムを是非、参考にしてみてくださいね。
